客商売の難しさ

まんねん

2007年07月23日 00:37

さっき、行きつけの店で飯を食ってたんですが、とある事件が起きました。

店に入ったら、いつもの常連が飲んでいて、奥の方に一見さんらしき、いかにも肉体労働派のおっちゃんが飲んでました。

実は私が来る前から事件が起きてたらしいんですが、私の隣に座っている梅ちゃん(60歳女性)にからむような発言をしていたらしいですね。その梅ちゃん、見た目は女性らしくないけど、すごい面倒見が良くて、私もホントにいろいろと世話になってるんで大好きです。

まあ、女子風呂に入ったら「ここは女性用ですよ」とクレームをつけられた前歴をもつ人なんで、その容姿に対して言われるのは慣れているみたいなんだけど、私が横に座った事によって、「若いツバメか」みたいな発言をしたんですね。

そしたら、梅ちゃん(60歳)がさすがに怒って、「ここはそんな店じゃないんで、ここは家族なんや。あんたもよう気をつけて物を言い!」と注意しました。見知らぬおっさんに対して、相変わらずかっこいい、と正直感動したんですが、それでも店のママに対しても「ねーちゃん」呼ばわりしているし、どうも酔っ払っている、そこでやっとどういうオヤジかは分かりました。

都町でよう見かけるけど、たいてい女の子に対して「ねーちゃん」呼ばわりするのは、人との接し方に慣れていない人です。よく言えばシャイ、悪く言えば実は人付き合いが苦手で、とにかく女の子に対してそう言えば通用すると思っている、コミュニケーション能力不足で未だ独身もしくは嫁さんに逃げられたというタイプです。酔わないと人に対して強気に話せないタイプなんでしょうねえ。

余談ですが、私は酔っても酔ってなくても、のほほんとマイペースに飲んで放置しててもボーっとニコニコしており、隣の客にからまれてもうまくあしらってくれているので助かると、都町の女の子に言われます。ただ、酒飲んでるときは幸せなんで、自然なだけですが。

話は戻り、梅ちゃん(60歳)はその無礼なオヤジに対してずっと説教しています。えらいなあ、本気でそう思いました。ほっとけばいいのに、親身になってマジで説教しています。そしたら、そのオヤジもシュンとしてしまい、完全におとなしくなりました。

そこでびっくりしたのが、反省はしているけどなかなか帰ろうとしないオヤジ、それを連れて帰るため、「あんた住んでいる場所どこ、ああすぐ近所やね、分かった、そこまで送るから帰るで」と無理やり連れて帰りました。これには、「もし相手が逆ギレして事件でも起こったら大変だ」と思い、すぐ止めようと外に追いかけたのですが、間に合わずすでに梅ちゃんは相手を自分の車に乗せて、強制連行してました。すいません、飲酒運転については不問にしてください。

心配のあまり、店に戻ってすぐ携帯に連絡したら、「ああ、○○で下ろしたから、また店に戻るわ」と返事があり、一安心です。何事もなくてよかった。

問題があったのはその後です。無事に帰ってきた後の、店の父ちゃんとママの対応です。
「ごめん、梅ちゃん、今度から出入り禁止にするから」と父ちゃんが言ったら、

「なんで梅ちゃんあんなの相手するの、ほっとけばいいのに」というママの反応に、梅ちゃんが

「いや、でもああいう弱い人っておるんや、ちゃんと説教したらシュンとなったし。ああいう人たちもおるっていうのも分かっとかんと」

と、どーでもいい人をフォローする梅ちゃん(60歳)の優しさと包容力、すごいなあ。梅ちゃんが言う弱い立場の人っていうのは、仕事柄よう会ってるし慣れてはいるけど、この場にいない人をそこまでカバーできん。よう人間できてる。

でも、ママは考えを一切変えないで「とにかく、ああいう人お断り」と突っぱねます。

その対応に対して、ちょっと私も頭にきたんで、「じゃあ例えるなら、修学旅行で一緒に行動する班の中にああいう人がいました。どうするの?」

「修学旅行とは違うやろ」、「一緒や、むしろ相手は客なんだから、それ以上に店側の方が考えないと悪いんで」

相変わらず会話がかみ合いません。私も商売人の息子なんでね、前から店の傲慢なスタイルに対してはずっと注意はしてたんですがね。そしたら、梅ちゃんが背中を叩いて「やめとき」とは言うけど、頭がカーっとなってるんで、


「言っておくけど、店の中で起こった事は全て店が責任とらんと悪いんで。それを客が客に向けて言った事に対して、批判する事自体間違えてるんで。よう覚えとき」


これには、ママも何も反論はしませんでしたが、間違いなく分かってないんだろうな。絶対自分の考えを曲げない人だから、それが店にとって損にしか結びついていないことが分かってないんだろうな。

そしたら、マンションに帰ったあと梅ちゃん(60歳)から連絡があって、「さすがに今回の店の対応には疑問をもったわ。もし、私がああいう弱い人の立場になったらどういうふうに扱われるかと思うと、嫌になった」と釈然としない気持ちを私に語ってくれました。私も正直釈然とはしなかったしね、それはよう分かる。

そしたら、「他の店でまたあんたに連絡するから、一緒にメシ食べようよ」と言ってくれたんで、私との付き合いを繋いでくれるのは嬉しいなあ。

でも、私の行き付けの店は、間違いなく貴重な常連客を一人失ったのは間違いないです。正直、私も前からママとはウマが合わないのはずっと我慢してきたけど、そろそろ限界かな。

常連を大事にするのは当たり前だけど、ほんとはそれ以上に一見さんに対して気を使うのが商売の鉄則なんでね。常連はとりあえずほっといても、それなり信頼関係ができているからいいんだけど、一見さんをいかに、この店は居心地がいいかというスタイルを見せない限り、新規開拓はできないからね。

うちの会社も、一見さんから電話で依頼が来たとき、まず依頼の背景を聞いて、うちの仕事が必要ないであろうという判断の時は、正直に「うちで仕事で受けますと、最低でも○○万円かかりますよ。だから、お金かけないで解決したほうがいいですよ」と依頼相手に伝えますからね。
あんまし生産性のない仕事なんで、せっかくの依頼でも必要ない時は素人さんに余計な金を使わせないようにしています。それが、ある意味信頼に繋がっているのは間違いないと思います。

商売は信頼関係が鉄則ですからね。改めて、気をつけなければならないと手綱を締め直すいい機会でした。